2020年2月27日 | グローバルCIO スコット・マイナード
ここ2週間ほど、金融市場はコロナウイルスに翻弄されている。今やイタリアから他の欧州諸国にウイルスが広がり、世界的なパンデミックの様相を帯びてきているため、世界経済の大幅な減速を危惧した投資家は米長期債と10年債の利回りの確保に必死である。長期債の利回りは2%以下、10年債は1.3%前後(いずれも2月27日現在)とまずまずの水準である。矛盾しているように見えるかもしれないが、テクニカル分析は30年債の目標利回りは1%、10年債は0.25%を示している。株式は調整局面に近づいており、さらなる下落が予想される。
また、長期債利回りは歴史的な低水準を更新している状況にあり、クレジットスプレッドは拡大しているものの、比較的タイトな水準を維持している。エネルギー、空運、小売り、サービス業などを中心にデフォルトの恐れが急激に上昇している状況を踏まえると、これは理解しがたいが、中央銀行の流動性供給によって資金が記録的なペースで債券に流れ込んでいる。そのため、スプレッドはタイトな状況が続いており、この流れが中断するまでは信用スプレッドは抑制された状況が続くであろう。
金利低下に対応し、弊社はデュレーションを長期化するために、ある程度の利回りで回る優良な長期デュレーション資産にできるだけ投資しているが、3%の利回りを達成するのは困難になってきている。利回りを高めるため、特定の顧客については「マネーグッド(お値打ち)」と考えるBB債を買い増している。
結局のところ、現在は古代中国の呪文(だと誤用されているらしい)が言うところの「数奇な時代」なのである。2月に入ってから、私が最も懸念していたのはFRBが月間600億ドルの短期国債を買い入れ、2019年第4四半期さらには2020年第1四半期の資産価値を押し上げることであった。こうした量的緩和により、ほぼすべてのセクターが上昇するため、いわゆるエブリシング・バブルが引き起こされた。
ここに来て、リスク資産のエブリシング・バブルは縮小の瀬戸際に立たされているように見える。コロナウイルスはすでに景気の後期サイクルの多くの兆候を示している経済に想定外の外的要因として登場した。さらに、終息にはまだかなりの時間がかかりそうだ。疾病対策センター(CDC)は警戒感を強めており、ナンシー・メッソニエ所長は「米国国民に緊急事態に備えることを求める」という趣旨の発言をしている。
このエピデミック(疫病)を早期に封じ込めることができるか、世界的なパンデミックがすぐそこに迫っているのか、現在は重要な転換点にある。私は疫学者ではないので、医学の専門家に詳しい用語の使い方は委ねるが、次の点については確信している。すなわち、米国内の見方では、隣人(もしくは隣国)に感染者がいればエピデミックであり、感染が速いスピードで米国全土に広がればそれはパンデミックである。
現在、S&P 500の支持線は3,000、10年債の利回り低下は1.25%前後(いずれも2月27日現在)にとどまっている。現時点では、私は債券・株式市場とも安定もしくは上昇するとの見方を考え直しているところだ。
今後、コロナウイルスの動向が各市場を左右するだろう。今のところ、相当なパニック状態にある。誤解を恐れずに言えば、最悪の時期は過ぎたわけではないが、今こそ冷静に考えて次なる手を考えるべきときであろう。
やがて、世界的に経済成長が減速し、企業が債務不履行に陥ることになれば、顧客ポートフォリオのリスク資産を増やす好機がくるかもしれない。たしかに、景気後退のリスクは上昇しているが、弊社はこれに対して十分に対処できる状況にある。ソロモンは、「賢き者は災いを見て、これに備える」と述べている。危機が迫っていることは確かだが、クライシスになった時にはチャンスが生まれるだろう。今はまさにそういう状況が来つつあるのかもしれない。
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